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Accha-Accha: A Playful Stroll with the Breeze
2022.07.01

あっちゃーあっちゃーとは「歩き回る」を意味するうちなーぐち。

宜野湾の風をコンセプトにうまれた沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわんで過ごす時間を「散歩」と捉えたら
その一歩一刻が、よりゆたかに楽しめる、ここだけの贅沢な経験になるのではないかと思いました。
訪れた沖縄の豊かな風土と伝統と、風というファインダーを通して進む散歩道。

その道すがら出会うアートが発見や驚きを喚起し、ここに吹く新しい琉球イズムを演出しています。

Art Direction for All Day Dining

地面に吹く風

ホテルエントランスを進んだ先にあるレストランの大きな壁面。外からの光も大きく取り込み、気持ちの良い空間を見渡すような存在感のある壁面には、沖縄の代表的な伝統工芸の紅型アートを採用しました。

Art Direction

紅型(びんがた)は沖縄を代表する伝統的な染色技法の一つで、13世紀頃誕生したと言われる非常に歴史の長い工芸品です。鮮明な色彩、大胆な配色、図形の素朴さを特徴とし、大国に囲まれた小さな王国であった琉球王国の重要な貿易品としての役割も果たしてきたということもあり、今も沖縄を象徴する工芸品の代表格です。現在は伝統的な技法を用いながらも多彩な表現で多くの紅型作家が沖縄を中心に活動しています。

Design Development

畑に吹く風

そこはレストラン。食を楽しむシーンの隠し味として、目で楽しく味わう沖縄土壌の恵を紅型で演出しています。島の長寿生活を支える、はるさー(畑人)が育てた野菜やフルーツの色や形をテキスタイル的に紅型アートに落とし込みました。

Design Fabrication-1

基本となる図案を実際の12mの壁画サイズにレイアウトし、全体のバランスを見ていきます。同じ図形の単調なリピートにならないために紅型の藍型技法の位置決めも含め、最終的に鮮やかな紅型のテキスタイルの中に藍型で表現される日陰や夜の雰囲気を共に織り交ぜるようにレイアウト検討を進めていきます。

Design Fabrication-2

紅型の制作工程へ。型彫り(カタフイ)→型附け(カタチキ)→色差し(イルジヤシ)→隈取り(クマドウイ)といくつかの工程を進めていきます。

Developing Innovative Fabrication Strategy

基本的な紅型の制作工程を経て、染めたオーガンジーの下に切り取ったモチーフを重ねるという、奥行き感を出すための独自の技法を取り入れました。

Final Destination

幅12mと巨大な壁画だとどうしてもフラットな印象になりがちですが、藍型の陰影やモチーフの重ねなどの技法を工夫することで奥行き感の演出とこの空間だけのオリジナル紅型アートを生み出すことに成功しました。3枚の原画パネルを高画質スキャンでデータ化し、レイアウトを最終調整した上で、最終的にはクロス素材で壁面へ張り込みました。

作品をデータ化し、普段とは異なる手法とスケール感でアートワークを完成させる。作家さんの手を離れて形にすることに、大きな責任を感じます。最終的に作品がどう見えてくるのか、作家さん本来の作風をしっかり維持するために施せる工夫とは何か、多くの会話を重ねました。
段ボールが飛び交う開業前、作家さんに仕上がった壁面を見ていただきました。手仕事で染め上げた紅型作品と、目の前の大きな壁面。そのスケールの違いに驚きと楽しさを隠しきれない作家さんの表情を拝見し、枠を超えて空間にふさわしいアートの形を追及するおもしろさを改めて実感しました。