世界有数のサーキットに誕生した富士スピードウェイホテル。アートワークを担当するにあたり、モータースポーツの楽しさ、迫力をアートとして伝えることをテーマとしてプランを作成しました。アートワークの多くは、トヨタ自動車様のご協力により、役割の終えた本物のレーシングカーのパーツから作成。さらにICAでデザインしたオリジナルアートを加え、モータースポーツファンにとっての特別な空間を演出しました。主なアートワークの製作過程を下記に紹介します。
3F Reception Lobby: Waffle Car Objects
ロビー壁面に飾るオブジェとして、F1カーをモデルとしたアートを作成しました。「無駄をそぎ落としひたすらに速さを求めた車たち」をアートにするにあたり、素材の選定、壁付けのための軽量化、審美性というキーワードを軸にデザインを進めました。そこで剛性が高く軽量化できる「ワッフルスラブ工法」という建築工法を応用。フォーミュラカー特有の流線型を抽象化して組み上げました。F1の歴史を象徴する各時代のマシンを元に成形し、車体のカラーリングをアクセントとしてデザインを完成させました。
実際のフォーミュラーカーをもとに基本となる構造を成形
レンダリングによりインテリア空間に最も相応しいデザインを検証
Left: 検証した構造をもとに製作図を作成
Right: 出来上がった躯体。それぞれの車体を表す意匠を施し、アートとして完成させた。
3F Reception Lobby: Racing Car Object
もう一つロビーを象徴するアートとして製作したのがレーシングカーオブジェです。実際にレースで使用され、サーキットを疾走したレース車両パーツをご提供いただき、アートワークとして再生させました。それ自体が魅力的なデザインであり、ファンの憧れでもある車体をどのように作り変えるか、様々なデザインのスタディを重ね、最終的には車体の迫力を失わないことを重視しながら、アートとしての新しい価値を生み出せることを目指して作成しました。
元になった実際のレーシングカー
デザインの検討
製作図
製作図に基づき加工
3F Lobby: Exhaust Pipe Sculpture
同じく、レーシングカーのパーツを利用して作成したアート例です。レストラン入口に置く彫刻を、レーシングカーのエンジンに使われたエキゾーストパイプを材料として、彫刻家の橘智也氏とともに作成しました。設置される空間に合わせ、サイズを検討。通路に置かれることから安全面についても十分に考慮した上でデザインを進め、エキゾーストパイプの形状を活かしながら、魅力的な彫刻作品として生まれ変わらせました。
彫刻の素材となったエキゾーストパイプ
設置空間におけるサイズ、設置位置の検証
Left/Middle: デザインの検討
Right: 決定した最終スケッチ
3F Dining: Circuit Art
長い歴史のある富士スピードウェイのレーシングコースは創設以来何度かレイアウトが変更されています。オールドファンには懐かしいレトロなコースから、現代のモダンスタイルのコースまで。その歴史を感じられるようなメモリアルな作品としてアートを作成しました、アートは3層の構造になっており一番下に創設時のコース、その上には中期のコース一番上には現代のコースと、変遷が立体的に感じられる構造としました。
Top: 創設時のコースレイアウト 1966~1974.7
Middle: 中期のコースレイアウト 1987~2003
Bottom: 現在のコースレイアウト 2005~
製作図
製作図をもとに組み上がったサーキットオブジェ
1F Spa: Floating Car
モータースポーツをテーマとしたホテルのプールサイドを飾るアートとして、スポーツカーのフォルムをかたどった吊り下げアートを製作しました。宙に浮かぶスポーツカーの素材には、水や流れる空気をイメージしたガラスを選び、一つ一つのガラス自体がアート造形として感じられるよう、ガラス作家の今村知佐さんとコラボレーションの上、製作をしました。造形にあたっては実際のスポーツカーをスキャニング、データ化した上で美しく効率的な構造を探り、さらに設置される空間を想定して調整を加え、実際のモデルで検証しながら完成させました。
実際のスポーツカーから構造をスキャニング
スキャンデータを元に基本となるデザインを作成
設置される空間に合わせ形態を調整
ガラス作家とともに製作する素材の研究
設置指示書
実際の設置風景
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