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The Beginning: One String Artwork for The Ritz-Carlton, Fukuoka
2023.08.24

6月に福岡の中心部に開業したラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」には、古来より日本の玄関口として文明を築いてきた福岡の土地柄から日本のルーツを紐解き、大陸と福岡、伝統と現代という2軸を経糸と緯糸になぞらえアートワークを納めました。その中で一番最初にゲストをお迎えするアライバルロビーに設置した、幅10mにおよぶ立体的な水墨画のストリングアートをご紹介します。

The Artwork

Research and Insights

福岡県の世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群。日本列島と朝鮮半島との間に位置する沖ノ島は、島全体が信仰の対象であり、今なお厳しく入島を制限する禁忌などの慣習が人々の間に根付き、 自然崇拝に基づく古代祭祀の変遷を示す遺跡がほぼ手つかずの状態で現代まで受け継がれているとのこと。百聞は一見に如かず、まずは見に行くことにしました。

当然ながら聖域である「沖ノ島」は立ち入ることができない場所。沖ノ島を肉眼で見る唯一の方法は「神守る島」と呼ばれる大島に行くこと。宗像大社を拝んだ後、フェリーに乗って大島に行きました。大島にある沖津宮遥拝所からはるか50km先の「沖ノ島」が水平線上にうっすらと姿を見せてくれました。

沖ノ島と並び、宗像大社の中でも最も神聖な場所「高宮祭場」は静寂に抱かれた祈りの空間。日本の祭祀の始まりの記憶。そして、高宮祭場と沖ノ島を繋ぐラインにある「さつき松原」は玄界灘沿い約5kmの樹齢200年のクロマツ群林。日本の原風景がそこにありました。

Art Direction

デザインの参考にした長谷川等伯の松林図屏風。平面の水墨画ながら空間・奥行き・風を感じる屈指の名作。日本の美学のルーツ。「沖ノ島」「高宮祭場」「さつき松原」という日本のルーツを物語る特別な場所をモチーフとして、イマジネーションの中でそれぞれの風景がオーバーラップしていく、、「無数の絲の重なりで水墨の濃淡、奥行き感を表現したい」当初の漠然とした構想は徐々に具体的なビジュアルイメージに落とし込まれて行きました。

Design Development

最初のラフスケッチは、このインスタレーションを共同制作したアーティストに描いて頂きました。写真で水墨画の世界観を探求しているアーティストで、雪や霧、雲など自然現象の濃淡、奥行きを撮影し平面作品を制作しています。
上手に「高宮祭場」、下手にかすかに見える「沖ノ島」、そして全体を構成する「さつき松原」。ゲストの動線/目線の順序とインスタレーションの構図が上手くシンクロするイメージが見えました。

現地で撮影した松林、高宮祭場、沖ノ島の写真を並べ、バランスを整え最終のデザイン画が完成しました。

Design Fabrication

1/10スケール模型を製作し、インテリアデザイナー、照明デザイナーと共にライティングのシミュレーションも行いました。松林に降り注ぐ日の光をイメージして背面、前面からランダムにスポットを当てる、アッパーライン照明で光のグラデーションをつくる、など検証を行いました。インスタレーションを成功させるためには照明デザインがとても重要になります。

立体的な水墨画を無数のストリングで表現するため、2Dで作成したデザイン画を元に3Dのデータを制作しました。3D化された木々をレイヤーごとに2D化して、10枚のレイヤーを作成し墨染めする範囲を細かい部分までデザインしていきます。

実寸モックアップを用いた検証作業も行いました。ストリングの素材、ピッチ、染色の濃度・ぼかし具合、沖ノ島の見え具合などのビジュアル検証と共に、揺れ具合、静電気、端部の処理、施工方法まで綿密な検証を行い、実際の制作へ落とし込んでいきます。

Setting & Installation

いよいよストリングの施工になります。当初、有孔ボードを特注して天井に設置しようと考えていましたが、天井を覆うと不燃材で無ければならず、アルミチャンネルでレイヤーごとに設置することにしました。一番奥のレイヤーのみ、かすかに望む沖ノ島を表現するため、ストリングカーテンを採用しています。

Epilogue

無数の絲の重なりは、写真には映らない不思議な美しさがあります。百聞は一見に如かず、写真や動画、文章では伝えきれないので、是非一度実際に見に行くことをお勧めします。

Projects > The Ritz-Carlton, Fukuoka